第48回名作コンテスト入賞作品

長年培ってきた珊瑚抹画の作品を工芸作品の域に押し上げる秀作となった。水を支配すると言う水怪を、稲妻と共に配し、その力強さを、赤珊瑚・白珊瑚・桃珊瑚・黒珊瑚・黄珊瑚・茶珊瑚等、珊瑚抹画の特性を十二分に引き出したことで、高知市長賞が決まった。肉厚な赤龍と深みある空間との趣は龍の年に相応しい！珊瑚抹画は二次元の表現に留まることが多く、このように珊瑚の大小を、巧みに用いることで、西洋美術のレリーフのようなマチェールに進境を見た。

シナ海珊瑚の老木を見事に活かしていた。何千年も海嶺を守り続けて来たかのような神を映しだしている。シナ海珊瑚は痛々しく破れ、珊瑚としての価値が失われつつあったものを、大切な形体として蘇らせたことに、作者の美意識を感じた。台座は一見、黒柿であろうか、単なる古材ではない・・何よりも数多ある神の名を用いず、神像としたことで作家の真意が深まった。カービング作家としての、材の活かし方に安堵の心と悠久の時を感じた。

虫食い珊瑚「深海珊瑚」の中に住まいする蟹二匹が可愛い作品である。中央の蟹は赤珊瑚を守っているかのようで、掌中の珠の如きものであるかのような佇まいが郷愁を誘っていた。混迷する珊瑚業界ではあるが、杜甫詩のごとく大切な伝統、文化、又産業としての使命等、その先の有り様までが感じられ、不思議と心が落ち着く作品である。

シナ海珊瑚を用いた珍しい作品である。なぜ大蒜なのかは分からないが、モチーフの持つ形状に肉薄したことで、物体の本質に迫っていた。根菜類を丹念に観察することで、自己を確立しているようにも思うが、同色に近い、竹と木は相殺するので配置ともども留意が必要である。しかし乍ら、質感、しなやかさ、色合いが素晴らしく表現されていて秀逸な作品である。

シナ海珊瑚を用いた力作であったが、雲と龍とのバランス感覚に物足りなさを感じた。この形状の珊瑚は上下に変化させる以外に、左右どちらかへ移動させるなど、大胆な仕事を臨みたい。帯留めなど、用の感覚を大切にしたのかもしれないが、匁にも拘らない仕事であってほしい。雲と龍の配分が同じ比率にならないよう留意が必要で、その違いにより作者の意図する内容を深めたい。そうすることで、白龍は単なる帯留めから、身に纏う者の守護として存在する。

とてもユニークな作品であり力作でもある。シナ海珊瑚・桃珊瑚・深海珊瑚を丁寧な仕事で彫り分け、大小の蝶が飛び交う素敵な作品だったはずだが、鑑賞者側の安定感を考えての箱仕様になったのかもしれないが、あまりにも珊瑚との相性が悪く残念でならない。宝飾珊瑚は唯一無二の存在、設えが弱くては太刀打ち出来ない。しかし乍ら、このような楽しい考えの作品を見たことがない。技術を鍛え、豊かさを育み珊瑚と話をしてもらいたい。さすれば、花回廊は現実のものとなる。

シンプルなチョーカーである。オメガチェーンにあわせて珊瑚を丸くカットしたデザインがとてもパランスが良かった。しかしながら、白珊瑚にはりつけた赤珊瑚は丁寧で高度な技術である。しばらく目を凝らして見入ってしまった。赤珊瑚の紋様は、花のような光のような生命を感じさせる。ティーンエイジャーの特別な宝飾品としてのギフトにピッタリだと思った。どんなシーンにも使いやすい大きさにも好感がもてた。リバーシブルと表示してあったが、裏の自珊瑚にもうひと工夫あればいいなと思つた。

オニキスと珊瑚を組み合わせたシリーズを作製している作家だ。毎回、想像的で魅力的な作品を見せてくれる。今回の作品は珊瑚の命そのままを表現したむずかしいジュエリーだと感じた。原木に珊瑚の花が開いたようなデザインに、あこや真珠がちりばめられている。花の中心のワンポイントのスピネルには生命を感じる。潮の流れを表現したシルバーと珊瑚・あこや真珠の配置、チェーンとの繋ぎの位置、この絶妙なバランスに苦労したのではないか。首につけた時のバランスも見事である。明るい未来を願いながら、心のままに自由に生きたい、そんな思いが伝わってきた。個性が強くて身につける人を選ぶかもしれない。

それぞれの作品のタイトルは実際のバラの品種だ。一つ一つのパラを観察しデッサンし、とても丁寧に愛情深く仕上げている。花のもつ意味を理解し、そのイメージから組み合わされた、珊瑚とバチカン。バチカンには、どれも豪華なダイヤモンドやサファイアがデザインされている。どれも愛おしい。今日は、どのトップにしようかな。ジュエリーボックスにコレクションしていつまでも眺めていたい作品。

先日、朝刊にバイカオウレンの記事が掲載されていた。今や有名な花。牧野富太郎博士のお母さんが好きだった花だ。私も牧野植物園で見たことがある。小さくてかれんだが力強さを感じる花だ。白珊瑚にダイヤとイエローサファイアがうまくこのバイカオウレンを表現している。花びらと雌しべや雄しべも、目を凝らしてよく観察している葉っぱの部分のこの小さいダイヤが今回の作品のカギになったと思う。白珊瑚をより美しく引き立たせ力強く見せたのだと思う。

珊瑚と布の異素材を組み合わせることは面白い発想だと思う。日々の鍛錬か、ペンダントトップの龍も丁寧に彫刻されている。何か新しいことをしたいという作者のチャレンジ精神にエールをおくりたい。今後の課題として、この異素材がひとつのかたまりで珊瑚ジュエリーとして身につけることができる作品になればいいなと思った。

三つのキューブが重なり絵画的。白珊瑚は空、アメジストとトルマリンは咲き乱れるお花畑。ほっこり幸せな気分になった。上下左右にチェーンをつけかえることができるから気分にあわせて楽しめる。日常的につけてみたいと思った。